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高3物理2021 質問:回転する扇形コイルに発生する誘導起電力

日曜日, 8月 22, 2021

高3 高校物理 電磁誘導

t f B! P L

 『理系標準問題集 物理』(駿台文庫)の問題番号103を解説してほしいというリクエストがあったので,解説します.

 図のように,xy平面内で扇形コイルOPQO(中心角\frac{\pi}{2})を,原点を中心として角速度\omegaで回転させます.$x>0の領域には磁束密度Bの磁場があります.このとき,コイルに発生する誘導電流と,コイルを1周させるために必要な仕事を求めます.

 電磁誘導の法則V=-N\frac{\Delta \Phi}{\Delta t}により,誘導起電力が発生するのは,コイルが上図の領域①から領域②に進むときと,領域③から領域④に進むときです.反対に,領域②から領域③に進むときと,領域④から領域①に進むときは磁束の変化がないので,コイルに誘導起電力は発生しません.領域①から領域②に進むときは画面手前に向かう磁束が増加するので,レンツの法則より,コイルには磁束の変化を打ち消す向き,つまりP→O→Q→Pの向きに電流が流れます.領域③から領域④に進むときは画面手前に向かう磁束が減少するので,反対にコイルにはO→P→Q→Oの向きに電流が流れます.O→P→Q→Oの向きに電流が流れた時を正とすると,電流の変化は下のグラフのようになります.

 次にコイルに流れる電流の大きさを求めます.\Delta tの間に磁場に侵入した部分である中心角\Delta \thetaの扇形OPSO(オレンジの部分)の面積\Delta Sは,

\Delta S=\pi l^2\cdot \frac{\Delta \theta}{2\pi}=\frac{1}{2}l^2\Delta \theta

なので,コイルに発生する誘導起電力Vは,

V=\left|-1\frac{\Delta \Phi}{\Delta t}\right|=\frac{B\Delta S}{\Delta t}=\frac{B\cdot \frac{1}{2}l^2\Delta \theta}{\Delta t}

V=\frac{1}{2}\omega Bl^2

 したがって,回路全体の抵抗をRとすると,回路を流れる電流の大きさIは,

I=\frac{V}{R}=\frac{\omega Bl^2}{2R}

 回路に電流が流れることにより,領域①から領域②に進むときはコイルのOPの部分に,磁場から回転する向きと反対に力が加わります.また,領域③から領域④に進むときはコイルOQの部分に,領域①から領域②に進むときと同様に磁場から回転する向きと反対に力が加わります.どちらの場合も,フレミングの左手の法則で確認してください.したがって,コイルを一定の角速度\omegaで回転させるために必要な力は,

F=IBl=\frac{\omega B^2l^3}{2R}

 コイルを一定の角速度\omegaで回転させるために必要な単位時間あたりの仕事を求めます.コイルのOPの部分に注目すると,コイルを\Delta \thetaだけ回転させたときにOP間が移動する距離は,原点からの距離に比例します.したがって,コイルを\Delta \thetaだけ回転させるときの,コイルにする仕事の平均は,

\Delta W=\frac{\omega B^2l^3}{2R}\cdot \frac{1}{2}l\Delta \theta=\frac{\omega B^2l^4}{4R}\Delta \theta

です.仕事をするのは,OPが領域②,及び領域④にあるときなので,\Delta \theta=\frac{\pi}{2}とすると,コイルを1周させるために必要な仕事は,

W=\frac{\omega B^2l^4}{4R}\cdot\frac{\pi}{2}\times 2=\frac{\pi\omega B^2l^4}{4R}

です.



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