バッハ

 数学と音楽は純粋に人間が作り出したものと言われている。確かに木々の間に数字は見あたらないし,風に乗って音楽が聞こえてくることはない。一方,絵画や彫刻,文学は何らかのモチーフを表現したものだし,物理学は自然を数学で表したものだ。人間が作り出したというより,目の前にあるものや心の中にあるものを表現したに過ぎない気がする。
 音楽の中でも,とりわけバッハの頃までは誰が聞いても美しいと感じるような普遍性があり,普遍性があるという点で,その美しさは数学的だ。さらに音が並ぶとどんな表現ができるか追求しており,無伴奏チェロ組曲やフーガの技法には音楽の地平を開くような,バッハの数学的な探求心を感じる。ところがモーツァルト,さらにベートーベン以降は音楽で内面を表現したり,何らかのイデオロギーを音楽に織り込んだりしており,表現するという点で物理学のような雰囲気がある。そのようにバッハの音楽をとらえたとき,バッハをどのように演奏するか。大いに悩むところである。
 もっとも私は,技術的な問題を棚に上げるとの話であるが。


 

コメント

おもしろかったら,ポチッとしてね。

このブログの人気の投稿

サンゴ礁再生計画

スイジガイ