東日本と西日本—列島社会の多様な歴史世界 (書評)

火曜日, 1月 30, 2007

書評

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 本書では,専門家がそれぞれの立場から,日本の歴史や文化,風俗について東西を比較して論じている。
 東西の差異には,大きく二つに大別される異種族が日本民族を構成していることと,日本への文化や技術の流入が西からということが,大きく影響している。
 言葉のアクセントや,「買った」と「買うた(コウタ)」などの言葉の変化を元に,方言を東西に分ける境界線を引くと,その全てが長野県西部県境を通るそうだ。その境は,室町時代末期に渡来したキリシタンによる精密な記録や,万葉集で東歌として集められた地域の西端とも一致している。なぜこのような境界線ができたのか。これには,日本人の祖先がどこから来て,どのように分布したのかということが関係しているようだ。日本人の頭のかたちや体型などからも,東と西の差異が見られるという。
 古来より文化や技術は,朝鮮半島経由や南蛮貿易により日本へ流入してきた。そのため,初期には西国に強い勢力(大和朝廷)が現れ,その勢力により東国は征服される。征服された東国の人々は,防人として酷使される。ところが,同様に征服されたクマソには,過酷な措置は執られていない。その背景には,同族として意識がはたらいたのではと考えられている。このように,源平の争いや明治の動乱など,日本史を東西の対立という視点で見るとおもしろい。
 我々が日本の歴史や文化を考えるとき,ついつい日本人を単一のもとして考えがちである。本書は日本の多様な構造を浮き彫りにしてくれる。(東日本と西日本—列島社会の多様な歴史世界 ,大野 晋, 宮本 常一 他著,洋泉社)

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